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“無縁社会”考―経済学の責務と若干の論点―
 


『高崎経済大学論集』第54巻第4号、2012年3月
 

2010年1月31日、NHKが、日本では年間32000人もの人が一人きりで死に、自治体によって埋葬されると報じた。それをきっかけに、「無縁社会」すなわち3つの絆(家族との絆、地域コミュニティの絆、職場における絆)が弱まってしまった社会状況に対する関心が、急速に高まった。この社会的変化には経済のマクロ的・ミクロ的動向が深く関係しているので、社会科学の諸分野とりわけ経済学には、無縁社会の進展理由、現在の実態と将来動向を究明し、必要な対策を提起する責務が課されている、と考えられる。Tでは、孤独死、自殺、ひきこもり、家族の解体、コミュニティの崩壊、不正規雇用などの実態と経済的背景を探り、無縁社会の全体的な構図を明らかにすることに努める。Uでは、無縁社会が経済学にどのような研究課題を意識させることになったのかを概括的に論じる。社会的包摂論を日本に適用するにあたって考慮すべき事項や、ソーシャル・キャピタルの経済的・財政的効果を検証する必要などを指摘することになる。

                         【目次】
              はじめに
             T.無縁社会の構図
                1.孤独死と単身化社会の趨勢
                2.家族の変容と地域コミュニティの衰退
                3.現役世代が直面している問題状況
             U.経済学の貢献をめぐる若干の論点
                1.池田信夫氏の無縁社会論批判
                2.自己責任論とホモ・エコノミクス仮説の不条理
                3.有縁化の経済効果と社会的包摂論
                4.ソーシャル・キャピタルの効能をめぐって
             おわりに